プラズマ切断におけるステンレスの切断加工
プラズマ切断は、まず加工する金属と電極の間において、プラズマアークを作り出します。それにより高温になった加工材料が融解した後、エアーやガスなどの気体を強い圧力で流し込み、融解部分を吹き飛ばすことによって、金属を切断します。物体と電極によりアークを作り出す方法と、電極のみで内部でアークを作り出す方法の2種類があります。現在、プラズマ切断は一般的に工場内で使用されており、鋼材加工には欠かせない存在になっております。
今回は、そのプラズマ切断でのステンレス(SUS)の切断加工について記載しようと思います。
こんにちは。 渡辺さん。 お元気ですか?
YES. ゲンキデス。禿げてはいるけどね。
そうですか。。今回は、プラズマ切断について聞きに来ました。ちょうど今、研究開発中の製品製作にあたって、ステンレスを加工する必要がありまして。でも、プラズマしか加工機が無くて、、そもそも、プラズマでステンレスを切断したいのですが、出来るんですか??ステンレス=レーザーの印象があるんですが…
まず、結論を話そう。「プラズマでステンレスは切断出来る」よ。
あっ、そうですか!!よかったー、有難うございました。では、また!
ちょっと待ってくれたまえ!!君は大事なことを聞き忘れている!!
何ですか、大声で、恥ずかしいですよ。。それで大事な事って?なんですか?
うーん、私は、「切断は出来る」といったが、質や精度が高い切断が可能とはいっていない。そもそも、ステンレスと鉄の違いを君は知っているかい?
一般的に、鉄と呼ばれているものは炭素鋼という部類で、炭素の含有量が高い鋼材といったところですかね。ステンレスは、同じく炭素は含まれているけど、その含有量やその他のクロムやニッケルが含まれた材料といったところでしょうか?
…うん、ばっちり。(私より詳しい、、、)そこまで詳しいなら、私に聞く必要が無いんじゃないか?
材料については詳しくても、切断は別だって、渡辺さんが言ってたじゃないですか!?
おおっおう、、そうだったね。。ステンレス切断は難しいよー。
よし、、、じゃあ教えよう。プラズマ切断方式では、アークにより融解した材料を吹き飛ばすために気体を使用しているでしょ??一般的なプラズマ切断機に使用される気体は、何を指すと思う?
エアーですよね!
そう、エアーだね。融解したステンレスをエアーで冷却及び吹き飛ばすとその面には、何が起こると思う?
切断できるってことですよね?
そういう意味ではない。。ステンレス材はプラズマによって融解した材料に対して、エアーを用いて冷却及び吹き飛ばしを行うと、その面は、ザラザラして尚且つ、変色してしまうんだ!また、ステンレス材のドロスは一度固まってしまうと、外す作業が非常に困難になんだ。
えーそうなんですか。。じゃあ、難しいってことですか!?
うーん。切断できるというのと、精度や面を保証するというのは違うという事だけだよ。実は、プラズマでも、様々なガスを使用できるプラズマ切断機も発売されているんだよ。 参考までに、それぞれのガス種類にて、プラズマによるステンレス切断面にどんな影響があるか教えてあげよう。
・酸素系⇒切断速度は速いが、面は黒く粗い精度。
・エアー系⇒大気を巻き込むため、切断上縁が粗くなり、灰色の切断面となる。
・窒素系⇒大気を巻き込むため、切断上縁が粗くなるが、黒色の滑らかな切断面となる。
・水素系⇒スラグや熱歪みはほぼ無く、切断面も銀色にすることが可能だが、ドラッグラインが出やすく機械の汎用性は低くなる。
・窒素+アルゴン系⇒切断面の硬さはアルゴン水素や水プラズマよりも軟らかいが、金色の金属光沢のある切断面となる。
・アルゴン+水素+窒素系⇒それぞれの混合率は非常に難しい。赤褐色となるが切断ドロスは少なめ。
こんなところかな。。
えっ!!!これが意味する事は、プラズマではステンレスは満足できる切断が出来ないってことですか!?
それは違うと思うよ。。 さっきも話したけど、各使用用途に応じて許容範囲が異なるという事で、どのガスでのプラズマ切断でも、その後の工程で使用する際に問題が無ければ良いんだ。また、私のこの話も、切断板厚が違っていれば、内容が全く変わってくるしね。単純に、「切断出来る事」と「精度や面を保証する事」は、全く違うという意味合い。
君は、常に完璧を求めているけど、そんなことでは無駄が多い人生になってしまうよ。人生、何事も「バランス」と「塩梅」。。
まあ、プラズマ切断で完璧なステンレス切断を行う事は、正直簡単ではないっていう事だね。最近では、かなり高品質のプラズマ切断機が開発されてきているから、高い品質の切断を行える可能性は非常に高くなってきているよ。
例えば、アメリカのH社のプラズマ切断装置は、ステンレスでも鉄でも高い切断品質を維持できる切断装置だよ。その他、ステンレス材の溶断で必ず問題視されるのは、パイプの内径側につくスパッターだね。。これは、やっかいなんだけど、切断後に酸洗いを行う製品であれば、なんとかそのスパッターを落とすことも可能なんだ。
結論からすると、「ステンレス材の溶断は難しいけど、その後処理やドロス管理を徹底すれば、問題なく使用可能」という事だね。わかったかな??
はい、勉強になりました。また、何かあったら、渡辺さんに聞いていいですか?
この渡辺でよろしければいつでもご指名ください。