パイプ切断機メーカーの挑戦
一般的に言われる“パイプ切断機”とは、鋼管、チューブ又はパイプと呼ばれる鋼材を溶断又は機械加工にて加工可能な機械を指します。
単純に鋼材全体の出荷量の中で、「鋼管」の出荷量を調べてみると、全体の2%ほどしかないために、この業界がどれだけニッチな業界化は一目瞭然です。脱炭素社会の実現という名目の中、鋼材全体の需要が伸び並んでいる中、更にその2%しかない、鋼管に対しての専用切断機を開発しているメーカーは、輪をかけて珍しい業種で、日本国内でも非常に稀な存在になっています。
今回は、そのパイプ切断機メーカーの挑戦について記載しようと思います。
渡辺さん!! 色々調べてみたら、渡辺さんが以前いた業界って、すごいニッチな業界なんですね。。
おお、丸秀くん、ようこそ。うん、そうだけど。。どうしたの急に??
今回の研究テーマは、【中小企業の生存戦略】についてなんですけど。。
たしか、渡辺さんの前職はパイプ切断機メーカーだったなーって思い出して、そのニッチな業界での立ち位置や戦略を渡辺さんに直接聞いてみようと思いまして。
そうだったのか、、、私は一社員で経営には携わっていないから、分からない点も多々あるけど、分かる範囲でお答えするよ。何を知りたいんだい??
うーん、そもそも、鋼管自体が全体鋼材の2%程の中で、その切断機メーカーって、絶対的な需要が少ないと思うんですけど、、、正直、食べていけてるの??って、、、
聞きづらいんですけど、渡辺さんなら教えてくれるかなって。
以下、渡辺談
食べていけるか否かでいったら、、、「食べてはいける」という答えが正しいだろう。ただし、大規模な会社を支えるにはニッチすぎる業界だし、すべて3次元的な考え方の専門知識が必須な業種の為に、人材や収入の観点からしても、大手企業が十分な知識とサービスを顧客に継続的に提供するには、厳しすぎる世界だよ。
そのために、日本国内だけではなく、外国に目を向けても、パイプ切断機メーカーの会社規模は小さい会社が多いんだ。実際に、数多くの大手企業が今まで、このパイプ切断機業界に進出したけど、ほぼ全ての大手メーカーが現在は撤退しているね。
へー、そうなんですか。人生って厳しいんですね。そんな中でも、長年生き残っている企業は、特別な生存戦略を持っているんですか??
そりゃー、経営陣は、色々頭を抱えながら日々苦しい思いをしているだろうけど、何よりも、この業界で一番重要なのは、ノウハウと知識だからね。長年続いている企業には、それなりの知識が詰まっていて、その知識は年々引き継がれていく傾向があるんだ。また、先ほども説明したけど、常に進化する技術の中でより、最新の情報を製品化する必要がある。人は年を取るからね、、、常に新しい事を出来るかどうかって考えると。。
社内人材競争が非常に激しい業界なんですね。。あっっ、、、という事は、渡辺さんもその競争に負けて、辞めさせられたってことですか??
それを私に言わせるのかね!? 笑 でも、まあ、端的に言うとそうなるね。。
中途半端な知識では、専業メーカーの社内では、生き残ることが出来ないんだよ。
中途半端な知識と中途半端なパイプへの愛情といったところか。。。逆に言うとね、今その業界に残れている人は、非常に知識が豊富な人が多いってことだよ。
ほー、すごい業界ですね。。でも、いくら知識がある人たちでも、そこまで流れが速い業界で、生き残っていくのは大変なんじゃないですか??
そのために、今はパイプ切断機メーカーも違う分野の切断加工へもTRYしているよ。例えば、四角パイプ、H鋼、アングルなんかの加工も1台のパイプ切断機で出来るようになってきているんだよ。そのため、海外では、“Dreamed Machine”って言い方をされている事もあるよね。「夢の機械」、良いネーミングだよ。
当然、丸パイプがメインの仕事なんだけど、それに付随する鋼材関係も、1台の機械である程度やってしまおうっていう、大規模投資が出来ない中小企業の味方って感じだね。その他にも、パイプ構造物に対するエンジニアリング業務も行っているから、パイプ加工業界=パイプ切断機専業メーカーって考えになってきているね。
“少数精鋭で日本の屋台骨を支える中小企業”が専業メーカーの正体だよ。良く分かったかな??
よくわかりました。パイプ切断機なのに、今ではパイプ切断以外も出来るって事なんですね。中小企業が生き残るには深い知識と経験が必要なんですね。